【考察】あの選手の適正年俸は何億円? WARから適正年俸を算出する

2021年11月10日プロ野球考察データ分析

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以下一部敬称略

プロ野球もいよいよクライマックスシリーズと日本シリーズとなり、オフシーズンもかなり近づいてきた。

今年のプロ野球ももうすぐ終わりと思うと少し寂しいが、オフならではのイベントも盛りだくさんだ。

FAや新外国人選手の獲得などが典型例で、様々な話題をファンに提供してくれる。

その中で最もたくさん報道されるのは年俸についてだろう。

「この選手はこれぐらいが妥当」「高すぎる」「低すぎる」など毎年ネット上では議論が盛り上がる話題である。

個人的にもその年俸が妥当なのかについては検討してみたいと常々考えていた。

幸いにして近年ではデータ分析が一般の人にも簡単になり、データの入手も容易になった。

なので今回の記事では年俸について、データ(貢献度)に基づいた適正年俸を算出してみたいと思う。



年俸の計算方法

従来の年俸計算

年俸の計算方法には様々な手法がある。

例えばヒット1本あたり10万円などというように1つ1つに値段設定をする手法。

こちらは非常にわかりやすく、また途中の節目に合わせて年俸をあげるということもある。

選手がたまに結ぶインセンティブ契約がいい例で、例えばメジャーの前田健太選手は

プラスα】前田健太、出来高は満額ペース…60試合制で支払い63%オフ : スポーツ報知
スポーツ報知より

というように先発数などによって出来高が決まった。

他に似たようなものにタイトルを獲得した分だけ加算するというものもある。

プロスピといったゲームでは本塁打王を獲得すると+1000万などという風に設定されており割と一般的であろう。

また、順位というのも年俸を左右する要素であり下位ほど低く抑えられるといわれている。

このように一般にゲームなどでは

①基本成績
②節目の成績
③タイトル
④順位

というところで年俸を計算しており現実でも(もう少し細かいところを見るとは思うが)似たようにして査定がされているだろう。

だが、フロント目線で考えると本来年俸は「勝利に貢献できる人」になるべく配分したいはずで上記のような査定では正しい評価ができないこともある。

例えば守備成績や走塁成績は従来の指標(打率・本塁打など)ではとらえきれないものの代表である。

もちろんエラーや盗塁成功率などといったものもあるが、2塁打をアウトにする又は2塁打を3塁打にするというのも立派なチーム貢献なのにそれが反映されないのは不当である。

さらに投手でいえば勝ちや負けなどはかなり運が絡むのにそれを査定に組み込むというのもいささか不当な面も大きい。

せっかくデータが発達し、より真に近いその選手の「貢献度」を測れるのに上記のような手法は「勝利に貢献できる人」への配分を阻害してしまう可能性がある。

そこで今回はきちんと年俸を「勝利に貢献している人」に配分できるよう、よりその選手の勝利への貢献度を表していると考えられる「WAR」を使用した配分式を考えていく。

WARとは?

「WARとはなんぞや?」という人もいるだろう。

WARとはものすごく簡単に言うと「控え選手と比べ、1年間で何勝分貢献したか」を測る指標である。

例えばWARが5の選手は1年間で5勝チームの勝利を控え選手に比べ増やしたということを示す。

このWARは投手も野手も

①投球
②打撃
③守備
④走塁

というデータ化できる野球のすべての要素を考慮に入れて計算している。

このため年俸を「勝利に貢献できる人」に効率的に配分したい場合には最適な指標なのである。

どうやって算出しているのか、またその妥当性について疑問のある人は以下のリンクを見るかコメントにまで。

今回の場合はWARは高いほど優秀で多くの年俸をもらうべきということを覚えていただければよい。

WARの参考サイト
https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20031

計算方法

ただWARの都合上、「控え選手との比較」なのでマイナスになる選手が出てくる。

仮にWAR1につき年俸1億円とするとWAR-0.5という選手の場合-5000万円ということになってしまうが実際には年俸にマイナスは存在しない。

このように計算上マイナスは邪魔になるし、さらに言えば最低年俸は1軍の控え選手ではなく2軍の控え選手の年俸である。

このためWARを少し上げ底をして2軍の控え選手というプロ野球界では(言い方は悪いが)最下層の選手が0になるように調整する。

上げ底幅に関しては1軍の控え選手が2軍でフル出場した場合WAR4を期待できるため(※)本来記録したWARに4を加えたものを年俸査定に使用する「年俸WAR」とする。

次にWAR当たりの年俸を換算するが年俸は時代によって大きく変化してしまう。

例えば現代では最も年俸が高い選手は田中将大選手の9億円だが例えば25年前だと落合さんの3億8千万がベストなど大きな隔たりがある。

このため今回はWARが大きい順に並べ、その順位に従って年俸を配分する。

幸いWARの分布と年俸の分布はかなり似ており、WARと年俸の相関係数も0.96と非常に高い。

ゆえにWARが大きい順に年俸を配分していけば自ずと最適な配分(高い貢献度の人に多くの年俸を配分)になる。

年俸の配分例としては以下のようになる。

年俸WAR年俸(万円)
12.790000
12.780000
11.070000
11.061000
10.850000
10.150000

このように配分していくと年俸WARと年俸の関係は以下のように2次曲線のような形になる。

少し高いWARの部分(横軸)がばらけているが基本的にはこの2次曲線の式を代入すれば適切な年俸になると考えられる。

ただしこの2次曲線の切片は800万円で実際のプロ野球の最低年俸である240万(育成選手)とは一致しない。

また1軍最低年俸が1500万であることも踏まえ年俸WARが4の時に1500万になるようにもしたい。

そのためWAR0~4付近の年俸計算式をWAR4以上の式とは異なるものとしてより現実に即した年俸計算ができるようにする。

具体的には

年俸WARが0~3 (年俸WAR+1)*200 (万円)
年俸WARが3~4 (年俸WAR)^2 *100 – 100 (万円)

を年俸とする。
※少しプロ野球の最低年俸と外れてしまうがそこは計算を楽にする都合上ご了承願いたい。

また年俸WARが4以上の場合は先ほどの2次曲線の方程式を用い

667.9*X^2-1307.9*X-3725.5 (万円)
※年俸WARをXとする

という式で年俸を算出する。

以上の計算式を用いると年俸WARと年俸の関係性は以下の図のようになる。

1軍に定着するまで(年俸WAR4以下)では年俸はほとんど上がらず、1軍に定着すると2次関数的に上昇していくというような図になっている。

現実でも1軍に定着するまではほとんど年俸は上がらないので割と現実に即した式になったのではないかと思う。

計算に用いた年俸とWARは以下のサイトを参照
(基本年俸は推定なことに注意)
https://1point02.jp/op/index.aspx
https://www.gurazeni.com/

適正年俸TOP10

さて、それでは実際に上記の式を当てはめた場合の年俸を見ていこう。

TOP10の年俸は以下の通りである。

選手名適正年俸年俸WAR
鈴木 誠也8739012.7
山本 由伸8739012.7
森 友哉6270411
柳田 悠岐6270411
村上 宗隆6005310.8
山田 哲人5119710.1
近本 光司441279.5
近藤 健介429969.4
源田 壮亮418789.3
上沢 直之396819.1

後半戦大爆発した鈴木誠也選手、文句なしのMVPといえる活躍をした山本由伸選手がトップで約9億円分の価値があると算出された。

鈴木誠也選手はメジャー移籍が取りざたされるができれば9億円以上の契約を結びたいといえるかもしれない。

7年間の長期契約を結んでいる柳田・山田選手もしっかり年俸分の活躍をしており球団としては安堵といったところだろう。

また近本・源田・近藤選手あたりは少し意外なように感じられるかもしれませんが、彼らは卓越した守備・選球眼で見た目以上に利得を稼いでいる。

しっかり評価をすべき選手たちといえるだろう。

年俸と実際の活躍の乖離

上記のTOP10からもわかる通り、実際の年俸分の活躍ができている選手は意外と少ない。

選手名実際の年俸適正年俸
鈴木 誠也3100087390
山本 由伸1500087390
森 友哉1600062704
柳田 悠岐6100062704
村上 宗隆1000060053
山田 哲人5000051197
近本 光司750044127
近藤 健介1950042996
源田 壮亮1500041878
上沢 直之850039681

そこで実際の年俸と適正年俸の散布図を見ると以下のようになる。

図を見ると年俸は高いのにその分の活躍ができなかった選手や、球団からすればコスパよく活躍した選手まで非常に幅広く分布していることがわかる。

このため実際の年俸の分配はそこまでうまくいっていないといえるかもしれない。

もちろんこれまでの実績なども踏まえて年俸は決まるため適正年俸と合わなかっただけでうまくいっていないというのは早計ではある。

ただ少し年俸の分配を見直し適切な選手に適切な年俸を提示することでよりチームを効率的に強化する余地は各球団残っているといえるかもしれない。

まとめ

今回はWARから年俸を算出してみましたがいかがだったでしょうか?

色々とツッコミたいところはあると思います(笑)。(そもそもWARが信用できるのかとか)

ただ今までセイバーメトリクスの指標を年俸に落とし込むという例は中々なかったと思うので一例として面白いものを示せたんじゃないかなと思います。

年俸と指標を関連づけることで大型契約を結んだ選手がきちんと働いているのか、というのを見ることができるのは意外と新しいのではないでしょうか。

※例えば柳田・山田選手が年俸分の働きをするには今年ぐらいの活躍が必要など

今回使用したWARは課金しないと見れないので一般的ではないですが個人で算出しているサイトもあるのでそちらのWARを代入してみると面白いかもしれません。

ちなみに観測史上最もWARが高かったのは2015年の山田哲人選手ですが、今回使用した式を用いると適正年俸は

13億8000万円です

とんでもないですね(笑)。

また、適正年俸1億円以上の選手は付録としてつけておくので「はえ~」という感じで楽しんでいただければと思います。

次回以降はこの年俸算出式を使って年俸予想的なものをしようと思います(時間の都合上多分ライオンズだけ)。

もしよければブックマークでもつけてお待ちいただけると幸いです。

それでは

(^O^)/バイバーイ

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WARが算出されているサイト
https://ranzankeikoku.blog.fc2.com/
http://npbstats.com/



適正年俸1億円以上の選手たち

個人的におっと思った選手は太字にしてます。

選手名実際の年俸適正年俸
鈴木 誠也3100087390
山本 由伸1500087390
森 友哉1600062704
柳田 悠岐6100062704
村上 宗隆1000060053
山田 哲人5000051197
近本 光司750044127
近藤 健介1950042996
源田 壮亮1500041878
上沢 直之850039681
杉本 裕太郎140038603
浅村 栄斗5000037539
茂木 栄五郎740037539
柳 裕也410036487
伊藤 大海150035449
中村 奨吾670033413
坂本 勇人5000032415
荻野 貴司800032415
吉田 正尚2800031431
桑原 将志490031431
牧 秀悟130031431
島内 宏明1200031431
栗原 陵矢440031431
宮城 大弥87029501
宗 佑磨190028557
加藤 貴之540028557
青柳 晃洋500026708
岡島 豪郎230025803
則本 昂大3000025803
田嶋 大樹420025803
早川 隆久160025803
丸 佳浩4500024912
奥川 恭伸160024912
塩見 泰隆135024035
甲斐 拓也1650024035
今永 昇太1000024035
田中 将大9000023170
木下 拓哉240023170
大瀬良 大地1500023170
千賀 滉大4000023170
戸郷 翔征260022319
大野 雄大3000022319
菅野 智之8000021482
菊池 涼介3000020657
小川 泰弘1875020657
西川 龍馬630019846
中村 悠平900019846
岡本 和真2100019846
大貫 晋一525019846
岸 孝之2500019846
小島 和哉340018264
松原 聖弥220018264
辰己 涼介200017494
坂倉 将吾180017494
鈴木 大地2000017494
西 勇輝2000017494
松本 航300016736
中野 拓夢80015992
田口 麗斗700015992
美馬 学1200015992
大山 悠輔1000015261
床田 寛樹270015261
佐々木 朗希160015261
森下 暢仁430015261
福田 周平370014544
小笠原 慎之介145013840
牧原 大成350013149
高橋 奎二145013149
安達 了一900012472
外崎 修汰1300012472
石川 柊太800012472
岩下 大輝350012472
山口 俊300012472
秋山 拓巳510012472
平良 海馬420012472
畠 世周220011807
岡 大海220011807
大城 卓三450011807
京田 陽太670011807
武田 翔太600011807
石川 歩1100011807
益田 直也2000011807
河野 竜生175011807
吉川 尚輝330011157
中村 晃2400011157
石川 雅規900011157
今井 達也280011157
和田 毅1500011157
山岡 泰輔850011157
栗林 良吏160011157
藤岡 裕大350010520
鈴木 昭汰160010520

WAR4の上げ底の根拠

1軍の控え選手は守備走塁が平均的で打撃はOPS.600ほどが期待できる打者である(例えばオリックスの紅林選手(OPS.603)はちょうど控え選手と同じくらいの打撃)。

2軍の選手が1軍に上がると打力が大体3/4になるのでこの控えの選手が2軍でプレーした場合OPS.800ほどの打撃ができると考えられる。

OPS.800の打者が600打席立つと平均と比べ打撃で+20点ほど稼ぐことができる。

また控え選手と平均の選手を比較した場合、600打席で+20点ほどの差が生じる。

今回の場合2軍の控え選手と1軍の控え選手との間のWARを上げ底分にするのでこの40点分がその上げ底分に該当する。

大体10点=1勝と換算されるのでこの40点の差はWARでいえば4の差となって現れる。

このためWARは4上げ底している。

※本来は守備走塁も含めるべきだが1軍と2軍の間の差が不明なので今回は省略する。

参考サイト
http://baseballconcrete.web.fc2.com/alacarte/major_minor.html

プロ野球考察データ分析