オールスターでも活躍! 「レオ」の本田圭佑の覚醒の理由

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2022年、パリーグで戦前では予想外ともいえる事変が起きています。

「あの」西武ライオンズのチーム防御率が2.51と2位に差をつけて1位になっているのです。

2018年から2021年にかけて4年間リーグ最下位の防御率に甘んじていたチームとは思えない躍進っぷりです。

特に中継ぎ防御率がすさまじく、1.77と2位と1点以上の差をつけて1位となっています。

この鉄壁の中継ぎの要因としては昨年の不調から脱した増田・宮川・森脇選手の捲土重来ともいえる活躍。

さらに昨年から好調をキープしている平良・水上選手の奮闘も大きいものになってます。

もちろん新戦力のボー・タカハシ選手が敗戦処理などを中心に試合を壊さない投球を披露するなど幅広い起用に応えているのも大きいでしょう。

そんな難攻不落ともいえる中継ぎ投手陣のなかで1人異彩を放つ投手がいます。

そう、それが今回取り上げる本田圭佑選手です。

本田選手は2019年に先発で6勝を挙げるなど2021年までは登板の80%以上が先発でした。

そんな生粋の先発といえる投手が今年は19登板全てを中継ぎでこなし、防御率1.57と傑出した活躍を見せています。

そのうえオールスターにも選出され、見事に佐藤選手を三振に切って取るなど素晴らしい投球を披露しました。

今回はデータ的になぜ今年中継ぎで輝きを放つことができているのか考察していこうと思います。

※データは7/26時点

パリーグ中継ぎ防御率

1位 西武 1.77
2位 福岡 2.88
3位 檻牛 3.05
4位 楽天 3.16
5位 千葉 3.63
6位 北海 3.69

本田選手の簡単な今季成績

まずは簡単に今季の成績を確認してみましょう。

本田圭佑選手

29試合登板 3勝1敗13H
防御率:1.59
投球回: 34
被安打: 24
奪三振: 27
四死球: 9
被弾 : 1

防御率1.59は30イニング以上投げたパリーグの選手の中では6位
ホールド8位とリーグ全体で見ても傑出した投球を披露しており、リーグでも有数の投手であることがわかります。

奪三振も多くはないですが少なくもない一方で、四球は少なく丁寧に相手を打ち取っています。

また、29登板中失点したのは5登板ありますがそのうち4登板を1失点で納めるなど大炎上もしない安定感も魅力です。
※残りの1登板も2失点

総じて制球がよく、大怪我をしない非常に傑出した安定感を持っていると言えます。

詳細成績

ではなぜこのような傑出した成績を残せているか、詳細に分析してみます。

まずは球種別成績です。(簡潔に下でまとめているのでスルーしても大丈夫です)

簡潔にまとめると

・直球の平均球速は143キロと速くはないが空振り率は平均より1%以上高い
・空振り率は高くない(平均は10%前後)
・制球がよくストライクをよく奪える(ストライク率・ゾーン率が2%ほど高い)
・横系の球はそこまで有効ではない
・チェンジアップのキレは抜群

と言えます。

基本的には横系の球を見せつつ直球・チェンジアップで相手を打ち取るスタイルです。
※実際に三振の80%ほどがこの2球種

では次に左右別の投球割合も含め、相手に合わせてどんな配球をしているのかを見ていきます。

※左側の図は先発用なので無視していただいて大丈夫です。

左右別の投球割合を見るとかなり違いがあることがわかります。

簡潔にまとめると

対左の場合

・横系の球が少なくなりチェンジアップ・フォークといった縦系の球が大幅に増える(対右と比べ+20%以上)

対右の場合

・逆に横系の球が多くなり投球の85%以上が直球・カーブなどが占める

ということがわかります。

それは以下のMAPデータが左はやや縦に伸びているのに対し右へは左右に広がっていることからもわかります。

ちなみに空振り率や被OPSを見る限り左よりも右の方を得意としています。

これは右へは投球数が3番目に多いカーブを安定して投げられること、そして左対策のフォークの精度がやや甘いためと思われます。

ところでこの投球マップを見て違和感を感じた方はいらっしゃるでしょうか?

そうです。

平均球速が143キロと現代野球では遅いとされる球速にもかかわらず高めに多く投げこんでいるのです。

※もちろん変化球の影響もありますが直球が半分以上を占めるのでここでは直球の影響とします。

しかしそれが悪手か、と言われればそうではありません。

分析によると空振りが取れる投手は高めを有効活用できることがわかっています。

※この図はhttps://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53548より引用

前述したように本田選手の直球は遅いにも関わらず空振りを多く取れています。

そのため球速は遅いものの高めのゾーンを非常によく活用することができています

先発時代との違い

このように本田選手は球威のある直球を高めに、そしてチェンジアップを投げ込むことで相手を打ち取っています。

そしてこの球威のある直球を高めに、というのが救援において本田選手が覚醒した大きな理由です。

以下のデータは昨年の本田選手の球種別分析になります。(昨年は6登板全て先発)

※2022になってますがバグなので気にしないでください

様々な違いはありますが特に注目したいのが直球です。

平均球速は140キロほどと覚醒した今年と比べ3キロも遅いのです。

そしてそれゆえ空振り率も1.3%と悲惨といえるまでに低く、被OPSも.850越えとかなり打ち込まれてしまってました。

直球の制球自体は今年とほとんど変わらないのですがその球威のなさからストライク先行にできず苦戦。

そしてその影響か、カーブもゾーンに入れることができなくなりチェンジアップに至ってはまともに機能しませんでした。

また、球威の無さがゆえの(言い方は悪いですが)逃げ腰の姿勢は配球にも表れてます。

以下の図をご覧ください。

これを見ると

①低めを狙ってのボールが多い
②ゾーンに入れられずカウントを悪くする
③結果的に甘い球を打たれる
④そのためより厳しく投げたいと考えてしまう→①に戻る

といった悪循環が発生していたのではないかと思われます。

それに対して今年の配球マップを見ると

非常に男らしく?勝負していることがわかります。

細かい数字になりますが特に今年軸になっている直球・チェンジアップには大きな変動がありました。

直球

・高めに投げる割合が10%ほど増えた
・反面低めの割合が15%近く減った

チェンジアップ

・高めや真ん中に投げる割合が30%ほど増加した
・反面低めの割合も30%ほど低下した

一見いい変化には見えませんが直球の球威が飛躍的に上がったことにより投手優位なカウントを量産。

また直球の威力上昇によりチェンジアップもより効果的に機能するようになったと考えることができます。

前述した悪循環

①低めを狙ってのボールが多い
②ゾーンに入れられずカウントを悪くする
③結果的に甘い球を打たれる
④そのためより厳しく投げたいと考えてしまう→①に戻る

を直球の威力向上により①を克服。

①球威があるため自信を持って高いところにも投げられる
②ストライク先行になる
③結果的に甘い球でも相手を打ち取れるようになる(もちろん厳しい球も多い)
④より自信を持って投げることができる→①に戻る

という好循環にもっていくことができたのが先発時代との大きな違いだと思われます。

2軍で何かつかんだ?

このように非常に大きな成長を遂げた本田選手ですがシーズン序盤にひそかに話題になったことがあります。

そう2軍のメンバーが足りないがゆえの10.2回154球完投負けです。

当時は流石に時代錯誤も過ぎるという声も多くありましたが今では1軍での活躍、また本人の談(https://number.bunshun.jp/articles/-/853618?page=3)もあり覚醒に必要だったものと言われています。

これについて個人的に少し気になるので検証してみます。

本田選手の2軍の登板は以下の4回でした。

検証のためこの4回を154球の前とあと、前半の1回と後半の2回に分けて分析してみます。

①7回5失点105球三振5四球1
②10.2回2失点154球三振3四球3
③7.2回3失点114球三振1四球2
④7回0失点101球三振8四球2

まず以下が①の登板内容です。

簡潔にまとめると

正直2021年の先発時代とほとんど変わらない投球をしていました。

球速が遅いのは仕方ない(球場の特性・先発なため)面がありますがやはりそれがゆえにチェンジアップが効果的ではありません。

ただしすべてが同じというわけでもありません。

対右への直球が高めに60%近く投げられていたのです。(昨年は40%いかないぐらい)

これは今の1軍での数値に近く、もしかするとこの時点で高めの有効性には気づいていたのかもしれません。

続いて154球を投げた後の③と④の投球内容を併せたものです。

ここでは対左においても変化がありました。

こちらは高めへの割合はそこまで変化はしていません(2%程の上昇)が低めへの割合が大幅に減りました(15%ほど)。

大胆にベルトの高さにも投げるようになったという方が正しいかもしれません。

兎にも角にも2軍での試合を通して直球を大胆に投げ込むことに対して抵抗感はやや薄くなっていたのかもしれません。

しかし154球を投げたからといって目に見えるような変化はデータ上ではありませんでした

もちろん本田選手の精神的に大きなものだった可能性は否定しません

ただ154球を投げたから成長した・考えた方が変化したというのも同時読み取ることはできませんでした。

もちろんサンプル数が少ないですしこの1例だけでどうのこうのと言うのはよくありません。

ですがあまり推奨したくはないこと(そもそも154球投げたのも事故に近い)ではあるかなと感じました。

また、2軍全体の登板を見ると正直昨年から成長していた部分というのはあまり見られませんでした。

比較的カーブの制球がよかった以外は

・直球の平均球速は139.3キロと昨年とほぼ同じかそれより遅いぐらい(もちろん球場が原因の可能性あり)
・チェンジアップは機能していない

今年の覚醒の要因である直球・チェンジアップに目立った変化はありませんでした。

ある1点を除いて…

その1点とは散々申し上げている通り直球の高めへの配球です。

2軍だからというのもかなりあると思いますが昨年の1軍登板に比べ10%近く高めに放っていました。

こういった「球威がないからと言って高めを怖がらない」という意識が救援転向による球速上昇。

そして相乗的なチェンジアップの効果増大につながったのではないかと考えられます。

余談ですがこういった内容で正直先発では目に見えた成長が見られなかった本田選手を2登板目にして勝ちパで起用。

そして勝利に結びつけた豊田コーチの手腕はもう少し取り上げられてもいいと思ってます。

まとめ

では簡単に本田選手についてまとめてみます。

①今年の本田選手はリーグでも有数の救援
②その要因は遅いながらも威力抜群な直球とチェンジアップ
③先発時代とは直球の球速増大が大きな違い
④2軍では高めでしっかりストライクを取ることを意識していた?
⑤救援転向による球威増大が2軍での意識づけと結び付けられ大胆な勝負が可能になり成績向上した可能性
⑥豊田コーチの目利きは値千金だった

といったことが言えます。

今では増田選手の離脱の穴を埋める役割を全うし、チームに欠かせない存在となっています。

オールスターでも堂々と直球とチェンジアップを投げ見事な投球を披露しました。

実のことを言うとややできすぎている面があることは否めないですが実力が間違いなく向上しているのも事実です。

本田選手を今後見るときは直球の威力がすごい増大していると思ってみるとより本田選手の成長が感じ取れて面白いかもしれません。

今後も是非頑張って大幅昇給を勝ち取って欲しいですね。

では今回はこの辺で

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参考文献・サイト

データの裏付けなど

https://baseballdata.jp/

https://1point02.jp/op/index.aspx

高めは有効?を検証した記事

https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53548

本田選手の取材記事

https://number.bunshun.jp/articles/-/853618?page=3