【確率○○%⁉】平良海馬選手が先発転向で成功するかを考察する

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今年のライオンズのオフは激動のオフだった。

正捕手森友哉選手のFA宣言に始まり今井選手の背番号変更、外崎・源田選手の複数年契約。

髙橋光成選手の海外志望など多くの話題があった中でひときわ大きな話題が平良選手の先発転向だろう。

一度保留という形で先発転向を志望し、実際に先発転向のチャンスをつかみ取ることに成功した。

球界でもトップクラスのリリーバーである平良選手の先発転向はライオンズファンをはじめ多くの野球ファンが注目しているだろう。

そしてファンの中には実際に成功するのかどうか、疑問に思っている人も多いはずだ。

そこで今回の記事では過去に先発転向した選手とデータ的に比較することで先発転向の成功率を考えていこうと思う。

ちなみに最初に結論を言っておくと

「成功する可能性は極めて高い」

と私は考えています。

以下ではその根拠を説明するのでよければ見ていってください。

①先発と救援のレベル差

先発転向の是非を考える前に、まず大前提として救援投手が先発をした場合どのような成績となるのかを確認する必要がある。

以下の記事によると

救援と先発を両方経験した選手の成績の変化は救援から見て

防御率は+1.25

FIP(※)は+0.78

増加するとある。

多くのファンが感覚的に理解している通り、先発は救援に比べ難易度が非常に高いことが見て取れる。

もちろんこの差は疲労の考慮などもされていないがある程度も目安にすることはできるだろう。

そのため以下で行う先発適正は成功だったかどうかや平良選手の予測成績はこの変化をもとに行うこととする。

またその際にはFIPを用いる(防御率は守備影響を受けてしまうため)。

※FIPとは
…奪三振・四死球・被弾から計算した投手の疑似防御率。
防御率は守備の影響を受けてしまうのでより本質的な投手の能力を示しているとされる指標。
防御率に比べ年度ごとの相関も高く翌年の成績を予測するのに優れている。

②機械的な平良選手の先発時の成績

では上述の式を使用して平良選手の疑似的な先発時の成績を計算してみよう。

まず平良選手の今年の成績は以下のようである。

61試合 防御率1.56 1勝3敗34ホールド9セーブ
75奪三振18四球2被弾 FIP1.72

何度見ても圧倒的な数値である。

特にFIPは12球団全体で見ても5位(30イニング以上)と傑出。

スタミナ面を考慮しなければ現状ライオンズの中で最も優れた投手であることは間違いない。

それでは計算してみよう。

先発時の成績ということで本来はイニングも想定したいがスタミナに関するデータがない。

そのため後述する先発転向に挑戦した選手の先発時の平均投球回を参考にする。

今回参照した選手は9名いるが、その中で最も平均投球回が少なかったのは松井裕樹選手の5.17イニングである。

ここからとりあえず5イニングは投げると想定し、24先発で120イニングを投げるものとすると

24先発 120イニング

防御率2.81 FIP2.50

というのが機械的に算出した平良選手の先発時の成績である。

少しイメージしにくいと思うがこれは2022年に中日の高橋選手が記録した成績によく似ている。

19先発 116.2イニング

防御率2.47 FIP2.96

もしかしたらあれほどの成績を残した救援投手を先発にした割にはしょぼいと思うかもしれない。

ただ前述したとおり救援と先発の間の差はかなり大きく実際にチームへの貢献度(WAR・WPA)では

中日高橋 3.6・1.88
西武平良 2.1・0.66

と大きな差をつけられてしまっている。

平良選手がYoutubeで何度?も語っていた先発転向の理由として

「もっとチームに貢献したい」

というのがあったがそれは数値上でも明らかであることが読み取れる。

あくまで機械的な算出ではあるが平良選手の先発転向は推奨されるべきものと言えるだろう。

※WAR…チームへの貢献度を示した指標。WAR1なら1勝分増やしたことになる。
※WPA…チームへの貢献度を示した指標でこっちは実際の試合状況を見て算出される。例えば同じアウト1つでも満塁の場面と走者なしの場面で前者の方が高く評価される。

③実際に転向した選手の是非

ただ実際に平良選手の先発転向が成功するかどうかはわからない。

当然ではあるが上で紹介した記事はあくまで全体的な話であり選手個人個人で見ているわけではない。

そこでここからは実際に年をまたいで先発転向をした、つまり今回の平良選手と同じ状況の選手をピックアップし比較検討を行っていく。

今回対象にした選手は取れるデータの都合上以下の9名とした。

条件としては

①先発転向前にほとんど先発経験はない

②シーズン途中での転向はなし

③数年間にわたり救援と先発を行き来した選手は除く

④2011年以降の選手

とした。

ケガなどで本格的な先発転向が1年跨いだ選手もいるがサンプル数がやや足りないので今回は対象に含むこととした。

対象選手(年)は(敬称略)

・山本由伸(2018→2019)
・松井裕樹(2019→2020)
・平井克典(2020→2021)
・千賀航大(2014→2016)
・福谷浩司(2018→2020)
・又吉克樹(2016→2017)
・古谷拓哉(2012→2013)
・美馬学 (2011→2012)
・榎田大樹(2012→2013)

である。

まずは彼らが成功したかどうかを検討する。

成功したかどうかの判定は翌年の先発時の成績が上述したFIP+0.78以内に収まったかどうかで判定を行った。

またその判定を行う際は年ごとによって投手有利だったり打者有利だったりと環境の差が異なることを考慮。

2年間の間のFIPの差から先発時のFIPを補正し比較した。

結果としては以下のようになる。

〇→成功 ×→失敗 (救援時FIP→補正先発時FIP)

・山本由伸(3.43→2.99) 〇
・松井裕樹(2.17→3.68) ×
・平井克典(2.58→4.65) ×
・千賀航大(1.63→3.44) ×
・福谷浩司(4.63→3.57) 〇
・又吉克樹(3.07→4.34) ×
・古谷拓哉(6.96→2.59) 〇
・美馬学 (2.88→3.17) 〇
・榎田大樹(3.17→3.31) 〇

意外かもしれないが千賀選手は機械的な算出だと失敗となる。

ただそれを補って余りあるスペックでもって先発に定着している、ある意味怪物である。

実は先発転向後は2018年まで徐々に成績を落としていた。

ただ直球の高速化や以下で説明するある要素によってメジャーにもいける投手になった。

他の選手は当時を知っている方によってはある意味当然と思うかもしれない。

やや意外なのは榎田選手だが彼の場合は先発転向と同時に統一球から切り替わったため打たれてしまったのが印象的だったのかもしれない。

④成功した選手に共通していたものと周回効果

では彼らの成功・失敗を左右したのは何だったのだろうか?

先発にあって救援にないものを考えると自ずと答えは出てくる。

そう、周回効果である。

周回効果とは非常に単純な効果で何回も対戦していると打者は対応して打ちやすくなるというものである。

実際先行研究でも(1巡目→2巡目→3巡目)

右投手 .318→.329→.338

左投手 .315→.335→.342

と被wOBAが増加していることがわかっている。

そしてその周回効果は概ね

①球種を増やすこと

②遅い変化球をマスターすること

によって軽減することが可能となると言われている。

↓先行研究が載っている本

そして実際に成功した選手の球種や遅い変化球について調べてみると露骨ともいえる差が見えた。

最も多い2球種の投球割合は(救援年→先発年)

・山本由伸(68.8→49.4) 〇
・松井裕樹(85.9→76.1) ×
・平井克典(81.1→76.1) ×
・千賀航大(81.4→72.8) ×
・福谷浩司(91.0→65.7) 〇
・又吉克樹(90.3→77.6) ×
・古谷拓哉(89.6→66.3) 〇
・美馬学 (87.7→64.0) 〇
・榎田大樹(72.2→63.6) 〇

と成功している選手は全員70%以下にしていたのである。

※これは先発から救援になったあとも含んでいるので松井・平井・又吉選手は不正確ではある

機械的には失敗となっている千賀選手も先発として大きく飛躍した2019年には65%にまで低下させており成長したことが見て取れる。

また遅い変化球の割合もわかりやすい差があった。

遅い変化球(カーブ・チェンジアップ)の投球割合は(救援年→先発年)

・山本由伸( 0.9→13.8) 〇
・松井裕樹(13.3→ 9.0) ×
・平井克典( 0.0→ 1.4) ×
・千賀航大( 0.0→ 3.1) ×
・福谷浩司( 8.9→15.7) 〇
・又吉克樹( 0.0→ 0.0) ×
・古谷拓哉(10.4→28.4) 〇
・美馬学 ( 6.2→17.2) 〇
・榎田大樹( 0.0→ 5.0) 〇

と成功した選手は5%以上遅い変化球を増加させている。

このため

①上位2球種に頼りすぎないこと

②遅い変化球をマスターすること

は先発転向するうえで非常に大事であることがわかる。

⑤平良選手の今年の成績

では今年の平良選手の投球割合がどうだったか、データを見ていこう。

対左右別に分かれているが合計すると上位2球種の割合は69.8%とすでに成功基準の70%を切っている

遅い変化球については今年は投げていないが2021年までは10%以上投げていた。

また今年のオフはツーシームと合わせてカーブも練習していると言っている。

このため先発転向に必要な

①上位2球種に頼りすぎないこと

②遅い変化球をマスターすること

という2つにおいて達成する見込みは非常に高いと言える。

そのため平良選手が投球内容において苦戦する可能性というのは非常に低いと言えるだろう。

⑥スタミナについて

そんな平良選手について心配なのは投球イニングを稼げるかどうかであるがこれも見込みがある。

投手が投げられる投球回というのは概ね

・1回を投げ切るのに必要な球数

・その投手の平均限界投球数

で求めることができる。

例えば110球が限界投球数で1回投げ切るのに16球必要な場合は平均投球回は大体6.2イニングとなる。

※ちなみにこれは2022年の髙橋光成選手が元ネタ

残念ながら今のところ平良選手の平均限界投球数は不明である。

ただし1回を投げ切るのに必要な球数は現時点でもわかる。

平良選手は14.7球で1イニングを投げ切ることが出来、仮に平均限界投球数が90球であって6回を投げ切ることができる。

もちろん救援と先発とで投球内容が変化し1イニングを投げ切るための球数は増える可能性はある。

ただ先行研究によると球数を増やす要因は四球が主であり救援から先発になることによって増減する三振数や被弾はあまり関係がないと推察される。

↓先行研究

https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53523

ゆえにもちろん通年を通してのスタミナなども鍵になりますがスタミナ面でもそれほどネックにはならないのではと思われます。

⑦結論と願望

結論として、最初に行ったように平良選手の先発転向の成功率は非常に高いと言えます。

もちろん何があるかはわからないので100%とは言い切れないですが、

確率としてはほぼ100%といっても差し支えないかもしれないぐらい(というか平良選手が失敗したらどうしようもないほど)です。

しかも言及はしませんでしたが成功した選手のFIPはほとんど増加せず、ちゃんと適応出来れば圧倒的な成績を先発としてマーク可能性も十分にあります。

具体的には投球回は予想できませんが山本由伸選手(FIP2.05)と匹敵する内容で投げることも期待できるでしょう。

2023年にライオンズが優勝するには現状大爆発する選手が3人以上必要です。

外国人選手の定着、ブランドン・岸選手などのケガからの復帰組。

今年苦しんだ西川・若林選手などの活躍も期待されますが最も高い期待を寄せられるのがこの平良選手の先発転向です。

安定して稼働すればチームの勝利を3個以上増やすことも現実的であり、逆に言えば優勝をするためには前提とも言えます。

個人的な願望としては今年基準で

150イニング FIP2.30 を記録しチームを引っ張っていって欲しいと思います。

2022年は惜しくも3位という結果になりましたが最下位という形で辻監督とお別れと言うことにならなかったのは非常に良かったと思います。

2023年は松井稼頭央新監督が就任しまた新たな西武野球となり新たな時代が始まります。

平良選手には是非その新時代の旗印となってくれること祈りたいと思います。

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参考サイト

・https://1point02.jp/op/index.aspx

・https://baseballdata.jp/

・https://nf3.sakura.ne.jp/index.html