Adjusted Attack Zone
突然ですが皆さんは野球の「Attack Zone」という概念をご存知でしょうか?
恐らく多くの野球ファンは聞いたことがないと思います。
セイバーメトリクスが好きな人でも聞いたことがある、
もしくは詳しく説明できる人は多くはないのではないでしょうか?
というのもこの概念はあまり詳しく説明されることがないからです。
なんやかんやセイバーメトリクスというのは先人の努力もあり指標の名前で検索すれば多くの指標の情報はゲットできます。
例えば「OPS」で検索すると最初の1ページぐらいはOPSの説明で埋まります。
更にもう少しニッチであろう「wRC+」でも同様です。
しかし「Attack Zone」は検索してもあまりヒットしません。
Statscastの発展により産まれた概念で年数が浅いなどということが原因と思われます。
そのため他に比べてあまり議論が発展していないように見受けられます。
そこで今回の記事はこの「Attack Zone」の普及と議論の呼び水になることを目的として投稿いたします。
もしこの記事で面白いなと思った方は是非自身でも深堀りして私と一緒に議論を深めていただけると幸いです。
また自分も知識が浅い麺があるので気になるところがありましたらジャンジャンご指摘ください。
Attack Zoneとはなにか
まずAttack Zoneを議論する前にまずAttack Zoneとは何かを説明します。
と言っても昨今ある複雑な指標に比べるとかなり簡単なので気楽に見てください。
Attack Zoneですが実は以下の図でほぼ説明できます。
簡単に言うと投手が投げる場所を4つのゾーンに分ける
という概念です。
細かい割合は置いておいて
Heart⇨ど真ん中周辺の甘いゾーン
Shadow⇨際どいゾーン
Chase⇨ボール球
Waste⇨くそボール
と覚えていただければ概ねOKです。
そしてイメージ通り最も有効なゾーンはShadowで最も投げ損なのがWasteになります。
Heartがそれなりに価値が高いことに驚くかもしれませんがHeartは見逃せば確実にストライクになるため価値は思った以上に高いです。
ちなみにHeartの得点価値0.014というのは1球Heartに投げると失点が0.014点減るということです。
なのでもし1試合100球すべてをHeartに投げ込むと平均より1.4失点少ない投球ができるということを示唆します。
また一般的な考えとして「Shadow」が多いほど制球が良く、「Waste」が多いほど制球が悪い
と考えるかと思います。
実際に数値で見てもそのような傾向は見て取れます。
上位の投手にしても下位の投手にしても納得できる選手たちではないでしょうか?
総合的に一見概念としては何ら問題なく、今回初めて知った人でも受け入れやすかったのではないと思います。
しかし私はもう少し改善の余地があると考えています。
Adjusted Attack Zone
私の考える改善の余地はShadowのゾーンの設定です。
論より証拠ということで以下の画像を見てください。
これは私が独自集計した2024年の右投手VS右打者のプロット図です。
赤い部分は投手が有利、もしくは該当の結果が多い場所になります。
つまり
マップでは多く投げている場所
空振り/スイングは多く空振り/スイングを獲得している場所
Pitch Valueは多く抑えている場所
GB_FBはゴロが多い場所
被塁打は塁打を多く打たれている場所が青くなっています。
ストレート
このとき注目したいのは「Pitch Value」という項目です。
これはダイレクトに失点のしやすさ、しにくさに繋がります。
見てみるとアウトローが最も失点を防ぎやすいですが高めにも赤いゾーンが広がっていることがわかります。
「直球は高めに投げろ」
という分析結果がありますがこれはそれを反映しているようです。
しかしこれは直球に置ける結果です。
他の変化球ではどうなのでしょうか?
代表的な横変化球としてスライダー、縦変化球としてフォークを見ていきましょう。
スライダー
流石はプロと言うべきか見事なまでにアウトローに集めています。
Pitch Value的にはアウトローのストライクゾーンがいいことがわかります。
反面高めは有効ではなく直球とは似ても似つかないプロットになっています。
フォーク
こちらは更に露骨というべきでPitch Valueは低めに、しかもボール球に集中しています。
直球とはほぼ真逆のプロットです。
また際どいボール球でなくともそこそこに価値が高いことも見て取れます。
その他に関しては下にデータを付けているので興味がある人は見てください。
これらから見て分かる通り球種によって有効なゾーンは大きく変わります。
このため失点抑止としての指標として活用する場合球種別に少しゾーン調整をしたほうがいいのではと思います。
この調節したAttack Zoneを勝手に「Adjusted Attack Zone」と命名しています。
Attack Zoneの議論
では具体的な調節はどのようにするべきでしょうか?
私は自身の集計では3つのゾーン区分を設定しています。
・直球は高めの方が価値が高いためShadowゾーンをやや上に、具体的にはShadowゾーンの下枠がストライクゾーンと被るようにしています。
・シュートはプロットをした結果新しい区分を作る必要性を感じなかったので既存と同じ
・その他変化球は高めより低めのほうが価値が高いケースが大半なので低めにShadowゾーンを動かしています。具体的にはShadowゾーンの上枠がストライクゾーンと被るようにしています。
ちなみにこのAttack Zoneは明確な定義がまだ定まっているという感じではないです。
なので例えばぼーのさんは以下のように
似たようなゾーン設定ですがさらにど真ん中に「Core」というゾーンを設定しています。
このような考えも非常に面白いと思います。
またMLBでは打者の選球眼を測る1つの指標のようにも使われています。
https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/shohei-ohtani-660271?stats=statcast-r-hitting-mlb
これは振った後の打球の結果も含めているため完全な選球眼としては扱えないと思います。
しかしこういったゾーンで区別することで選手評価に1つの軸を与えることができるのではないかと考えます。
一見完成されきっているように見えてしまうセイバーメトリクスですがこうやってまだまだいろんな観点で見ることができます。
このゾーン区分に関しては私が独自集計したNPBの非Statscastデータでやっているので疑問はあって当然だと思います。
そもそもStatscastがある昨今こういった大枠のゾーン設定が必要かどうかもわかりません。
ただ何かしらの視点の提供になるかもとは考えています。
疑問点などあれば遠慮なく質問などしてくれると嬉しく思います。
これ以降は途中で使った球種別のデータを置いておきます。
興味のある人だけ見ていってください。
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データ置き場
赤い部分は投手有利な場所
GB_FBはゴロが多い場所
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